モモタロウ異聞。
以前みつまりが投稿していた『実刑 桃太郎』が個人的に面白かったので、私も『桃太郎』の二次創作をせんとするなり。
みつまりのはこれね↓
モモタロウ異聞 モモタラズ
特定は勘弁な。
ちょっと特定とか怖いから具体的なことは言えないんやけど、まあ、そんな前でもないんやけどね。あ、言うてもそんな最近ちゃうで、ちょっとそんな探るような目つきは辞めてや。まあ、昔々ってことにしとこか。それでな・・・って場所言うたら、そんなん特定一発やんか、危ない危ない騙されるとこやったわ、もう怖いなあホンマに油断も隙もあったもんやないで、まったく。てなことで場所は言えんのやけど『あるところ』ってことにしといてホンマに頼むで・・・って、うわッ、もしかしてもう分ってもうてる?え、嘘やそんなんこれ分かってるやろ、アカンで騙されへんで、アンタのその目付き、分かってるって目してるもん!無し無し、この話しはもう終わり~!
ー完ー
おじいさん、おばあさん、桃、登場。
桃、到達せず。
昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯へ行きました。そのころ、川の上流にある立派な大きな桃の樹に、丸々と太った桃の果実が実っておりました。まさに今食べ頃の桃はその重みから枝を大きくしならせておりました。時はまさに今!桃は枝を離れ空中へ、そして地面へとドスンと落下しました。地面へと…。
ー完ー
桃、到達す。
おばあさんが川で洗濯をしていると、川の上流から桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきました。
おばあさん「まあ、なんと立派な桃が川を流れていることでしょう」
桃はどんぶらこどんぶらこと川を流れてゆきます。
おばあさん「これも何かの良い予兆かねえ。ありがたやありがたや」
桃は流れるスピードを緩め、どんぶらこどんぶらこ。
おばあさん「さて、それじゃあ洗濯に戻るとするかねぇ」
桃は川の流れに逆らいおばあさんの近くへと寄ってきました。
桃「どんぶらこ!!!どんぶらこ!!!」
おばあさん「あらあら、せっかく流れていたのに。ほおら、下流の人にも姿を見せておやり。それじゃあ、わたしゃ家へ帰るとするかねぇ」
桃「どんぶらこ…どんぶらこ…」
ー完ー
ご一緒していいですか。
桃は川の流れに逆らいおばあさんの近くへと寄ってきました。
おばあさん「あらあら、桃が近寄ってきたせいでお洗濯ものができんわい。ちょうどええ、ここいらでお昼ごはんにするかいなぁ」
と、おばあさんは川辺でお昼ごはんにしようとすると
ザパァ
桃「あ、自分もお昼ご一緒させてもらってイイっすか?」
ー完ー
追うもの、追われるもの。
上流から流れてきた桃を見て、おばあさんは閃きました。「この川の上流にはたいそう立派な桃の樹があるに違いない」と。思うが早いか、洗濯物をその場に置き去りにして、上流へと向かうおばあさん。その姿はおばあさんと言うにはあまりにも似つかわしくない、若々しい姿でした。「今夜は桃パーティーだ!!」。もちろん、桃も負けてはいられません。ここで負けては桃の名が廃ります。ここで俺が負け、他の桃まで馬鹿にされるのは真っ平ごめんだ!トビウオのごとく川を遡りおばあさんを追います。背後に迫る桃の息遣いを感じつつ走るおばあさん。追う桃。ある時は急流を。ある時は滝を駆け上がり、桃とおばあさんは行きます、桃の樹を求めて。そう、二人の旅は、今始まったばかりなのです。そして、その後二人の姿を見た者はいませんでした。
ー完ー
桃、海へ。
社会派、桃。
おばあさんが川でおじいさんのワイシャツの襟の汚れ落としに熱中していると、川の上流から桃がどんぶらこどんぶらこと流れて来、そして下流へと流れ去ってゆきました。ももは、どんぶらこどんぶらこどんぶらこと川を下り、やがて広い河口を経て海へとたどり着きました。はてなき世界の海をどんぶらこ。ある時は、難民を乗せた船と並走してどんぶらこ。ある時は流出した油にまみれ、飛べなくなった海鳥とどんぶらこ。またある時は、軍艦が行き交う争いの海を、どんぶらこ。東に病気の海があれば、どんぶらこと行って看病してやり、西に疲れた海があれば、どんぶらこと行って背負ってやり、南に死にそうな海があれば、どんぶらこと行って怖がらなくて良いと言ってやり、北に争いの海があれば、どんぶらこと行ってつまらないからやめろと言い。雪の降る冬も、日照りの夏も、桃は今日もどんぶらこどんぶらこと世界の海を駆け巡るのでありました。
ー完ー
元祖
海へ下り、数年もの間、世界を旅した桃は、やがて故郷が恋しくなりました。「そうだ、故郷へ帰ろう」桃の頭がどこなのかは当然分からないけれども、桃の頭にそんな考えが浮かんだのも当然だと言えます。桃は、故郷の川へ。数年ぶりの故郷、おばあさんはまだワイシャツを洗っています。何もかもが懐かしい故郷。川の流れに逆らい、浅瀬を越え、滝を棒高跳びの要領でクリアし、桃は帰り着きました、故郷へ!
こんにち、鮭が故郷の川に戻るのは、この桃の里帰りを見た魚が真似たものが始まりだと言われています。その証拠に、鮭の身は今も桃がピンク色なのと同じようにピンク色なのです。
鮭の雑学 ー完ー
以上、桃太郎の登場しないモモタロウ異聞 モモタラズでございました。
最後に、桃太郎実写化映画の嘘広告的なものを書いて終わりにいたします。
MOMO太郎 The movie
鬼ヶ島に流れ着いた桃から生まれたモモタロウ。鬼と平和に暮らすモモタロウに迫る鬼婆の影ー モモタロウは要らない、財宝を寄こせ!
その時、サルは!?キジは!?イヌは!?それぞれの未来を拓く選択ー とは
驚愕のドキュメンタリー。鬼婆は実在する!今も、この世界のどこかに ・・・
ワトンシン ポスト「ドキュメンタリーとは信じられない、財宝の燃えるシーンは圧巻の一言」
ニューヨーク タムイズ「このような鬼婆が実在するなんて。日本の警察はどうなっているのか」
芝刈り爺さん「お得なキビ団子付き鑑賞券で、日ごろの家事のつらさを忘れて見入りました。戦闘シーンでは、年甲斐もなく手に汗握り鬼を応援しましたが・・・。おっと、ばあさんが帰ってくる前に川で洗濯しとかないと、それじゃ!」
それでは、おあとがよろしいようで。